【備忘】Black-Scholes-Mertonの公式の証明
今回は完全に自己満足な記事となっておりますので、その点ご留意ください。
おはこんばんにちは。運用部ではないにしろ投資顧問会社で働いているとデルタやセータなどのグリークスに出会うことがあります。そんな時、そもそもブラックショールズ方程式ってどうやって証明するんだっけと思うことが良くありました。そこで、この記事ではジョン・ハルのフィナンシャルエンジニアリング(第7版)の第13章付録にあるBlack-Scholes-Mertonの公式の証明を復習したいと思います。
フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系
- 作者: ジョンハル,John C. Hull,三菱UFJ証券市場商品本部
- 出版社/メーカー: 金融財政事情研究会
- 発売日: 2009/12
- メディア: 単行本
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補題の証明
まず証明に必要な補題の証明を行いたいと思います。
(ジョン・ハル「フィナンシャルエンジニアリング(第7版)」P453より)
が対数正規分布に従い、の標準偏差がであるとき、 が成り立つ。ここで、
であり、は期待値を表す。(引用終了)
なお、は定数です。
証明
をの確率密度関数とします。このとき、期待値の定義から となります。なお、右辺の積分区間がからとなっているのは、ではであるからです(書いてもいいけど省略している)。は対数正規分布に従うので、その期待値は、 となります。ここで、を、 と定義すると、この変数は期待値、標準偏差の標準正規分布に従います(は対数正規分布に従うのでは正規分布に従う)。要は対数変換したのち、正規化したということです。なので、密度関数は、 となります。(13A.4)を用いて、(13A.2)式の右辺の積分でをに変数変換すると、以下のようになります。まず、(13A.4)をについて解くと、
となり、ここから
となります。また、(13A.4)をについて微分し、について解くと、
が得られます。は対数正規分布に従うので、その確率密度関数は、
なので、これらを(13A.2)に代入し、
整理すると、
が得られます。上式を書き換えると、 が得られます。ここまではの期待値を変数変換しただけです。ここで、
となるので、(13A.5)式は
と書き換えられます。を標準正規分布の累積密度関数とすると、(13A.6)式の最初の積分はが以上になる確率なので、
つまり、正規分布の対称性から
と表すことができます。(13A.3)式をに代入すると、
になります。同様に(13A.6)式の2番目の積分はとなる。よって、(13A.6)式は
となり、(13A.3)式を代入すると証明完了。
Black-Scholes-Mertonの結果
ここまでこれば8割がた証明は終わっています。時点に満期を迎える配当のない株式に対するコールオプションを考えます。行使価格を、無リスク金利を、現在の株価を、ボラティリティをとします。コール価格はこのコールオプションで得られる便益を無リスク金利で割り引いた値となります。
ここで、は時点における株価で対数正規分布に従います。はリスク中立世界における期待値を表しています。さらに、 *1、の標準偏差はとなります。先ほどの補題より(13A.7)式は、
ここで、
これで、Black-Scholes-Mertonの公式を導出できました。